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    早春

    2013.03.22 カイの物語 Comment:0
    「マンサクの花の咲く頃にまたお逢いしましょう。」
    あの人はそう言って電車に飛び乗った。
    僕はマンサクというものの存在すら知らなかったので、
    「マンサクはいつ咲くのですか。」と聞き返すと、
    彼女はフフフと笑って何か答えたけれど、その時にはもうドアは閉まっていた。
    素敵な笑顔を残し彼女は去っていった。
    そのあと、結局お互いそれぞれ忙しくなりすれ違いのまま逢うことは無かった。
    あのとき彼女はなんと言っていたんだろう。
    早春一番に咲くマンサクの花を見ると僕は彼女の素敵な笑顔を今でも思い出す。
    そうか、そういえば彼女はハルって言う名前だった。

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    きつねとカラス

    2013.03.13 カイの物語 Comment:0
    今年は雪がとても多いので、北に住むキツネが食べ物を求めてこの地までやって来た。
    北のキツネ「やっと食べ物にありついた。しかもオレの好物のネズミだ。」
    その時、カラスが2羽やって来て、こう言った。
    カラスA「キツネさん、そのネズミは人間のまいた毒団子を食べてフラフラになっていた奴だから食べないほうがいいよ」
    カラスB「そうだ、そうだ、食べたら死ぬよ。」
    北のキツネ「バカを言っちゃいけないよ、オレは母親からカラスの言うことだけは聞いちゃいけないってちゃんと教えられてるんだ。お前たちのいう事なんてこれっぽっちも信じないね。」
    カラスA「知らないぜ、オイラはそのネズミが団子を食べる所を見たんだぜ。」
    カラスB「そうだ、そうだ、オイラも見た見た。」
    北のキツネ「フフン、そうやってオイラをたぶらかしてネズミを横取りしようっていう腹なんだろ。騙されないよ。」
    カラスA「バカなキツネだなぁ、この辺りじゃオイラ達は例外的に正直者のカラス兄弟で通ってるんだ。」
    カラスB「そうだ、そうだ、オイラ達は正直者。」
    北のキツネ「お前達は兄弟だったのか。そういえば今思い出したけど、南の土地には恐ろしく嘘つきでお調子者のカラス兄弟がいるって聞いたことがあるぞ。さては、お前達のことだな。」
    カラスA「それはオイラ達じゃないぜ。深山組のカラス兄弟の事だろ。」
    カラスB「そうだ、そうだ、深山組のカラス兄弟だ。」
    薄れゆく意識の中、キツネとカラスの会話を聞いていたネズミがどうにか一言つぶやいた。
    ネズミ「うぅぅ、毒がまわってきた・・・。」
    「うへぇ」と言って北のキツネはネズミを放してしまった。
    その瞬間、ネズミは脱兎の如く駆け出し雪の隙間に消えていった。
    北のキツネ「・・・・・」
    カラスA「・・・・・」
    カラスB「カァカァカァ〜〜」

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    いやぁ

    2012.09.14 カイの物語 Comment:0
    「それにしても暑いじゃねぇか」
    「ほんとだよね、オラちょっと早く移動して来ちまったかな」
    「ふふ、まぁいいじゃねえか。ここには虫がいっぱいいるんだし」
    「でもなぁ、オラの好みの虫があんましいねえんだよ」
    「なにを贅沢なコトこいてんだ、お前さんは。食べ物があるだけでもありがたいってもんなんだよ」
    「おお、たしかにその通りだぁ。おめぇさん、いい事言うな」
    「そりゃそうだよ、オレはね、”昆虫発生における気温及び湿度変化を伴う気候変動による相対的影響研究チーム”の一員だからね。
    「なんだかよく分からないけれど、おめぇさんはすごい鳥さんだったんだ」

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    ケロン

    2012.08.30 カイの物語 Comment:0
    なんだか大雨が降りそうな予感がする。
    ぼくアマガエルという名前がついているけど、雨に当たるのあまり好きじゃ無いんだ。
    雨粒って当たると痛いしね。
    あっと、雷がずいぶんと近くなってきたし雨の匂いも強くなってきた。
    そろそろ草の中に避難したほうがいいかな。

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    ピカッ、ドォォォ〜ン、グォングォン、ザザザァ〜、バチバチッ、ドザザァ〜。
    うわぁ、四方八方から水が押し寄せて来たぁ!
    アァ〜ン、流されていくよお〜〜ぉぉぉ〜〜〜ォ〜〜。

    ツチガエルの夕暮れ

    2012.08.14 カイの物語 Comment:4
    「すまない、何度も謝っておるではないか。もうこれで許してはもらえぬか。あの時、拙者が飛び出してしまったばっかりにあんな事になってしまって、本当に申し訳ない。心からすまないと思っておる。しかし、飛び出してしまうのは本能というものじゃ。自分ではいかんともしがたいのじゃよ。」

    「あなたはまだそんな事を言っていらっしゃるのですか。まだもうしばらく、そこでそうしておいでなさいませ。」

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    諜報部門

    2012.08.09 カイの物語 Comment:2
    ーー東のA6地区、定期チェックーー
    「よし、みんなセンサーを東に向けるんだ」

    ーー音も無く静かに、一斉に蓮の実センサーを東へと向けるーー
    「なにかを捉えたものはいるか?」

    ーー認識番号HASU10110がツバメ夫婦の会話をキャッチーー
    「うちの子もそろそろ飛び出す時なんだけどねぇ」
    「いや、あの子らにはまだまだ時期尚早だ」
    「しかしお隣りさんもそのお隣りさんもみんな子供たちは巣立ったのよ」
    「うちは産まれたのが他所より遅かったじゃないか」
    「あらそうかしらねぇ」

    ーー認識番号HAS48220が人間の会話をキャッチーー
    「おまえさんはいつも素敵だだねぇ」
    「あらいやだ、何を今さらそんな事を」
    「これからもよろしく頼むで」
    「はいはい、おだてても何も出ないですけどね(笑)」

    ーー認識番号HAS00215が大糸線電車の音をキャッチーー
    ”ウィィィ〜ン、ガシャンガチャン、ガッガッ、ウィィィ、ゴットン、ゴットン、ゴゴン、ゴゴンゴゴゴン、ゴンゴン、ゴンゴン、・・・・”

    ーー認識番号HAS99099が風の会話をキャッチーー
    「ワタシは秋の風、ちょっと涼しく乾いた空気を運んできたましたよ。ソヨソヨソヨ〜」
    「おいおいちょっと待てよ、まだまだオレの季節だぜ」
    「あら夏の風さん、それじゃぁ勝負しましょうよ」
    「いいぜ、受けて立ってやろうじゃねぇか」
    「ヒュ〜〜、ヒュ〜〜」
    「ソヨソヨソヨ〜」

    ーー認識番号HAS55555が雨の音を捉えるーー

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    蕎麦畑の謀議

    2012.08.05 カイの物語 Comment:0
    「おい、ちゃんと手に入れてきたか。」
    「あぁ、なんとか手に入れてきたけれど、仲間が2羽やられた。1羽はお前のよく知っているヤツだ。」
    「えっ、だれなんだ。」
    「サギビッチ。」
    「・・・・・」
    「ヤツは自分の身を盾にして俺たちを守ってくれた。」
    「そうか、ヤツらしいな。」
    「ところでヤツの命と引き換えに手に入れたコイツはなんなんだ。」
    「そいつはオレたちサギ一族存亡の鍵を握る場所へと導いてくれるものだ。そこで会うことになる”グレートバード”にそいつを渡さなければならない。」
    「渡すとどうなるんだ。」
    「いや、こいつはおとりだ。」
    「おとり?」
    「この先はレベル7以上のアクセス権がいる。お前には話すことができない。しかし、サギビッチの命は決して無駄にはしない、あとはオレたちに任せろ。」
    「ウムム分った、じゃぁ任せたぞ。ちゃんと生きて帰ってこいよ。」

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    カイの物語ーロクの場合ー

    2012.03.08 カイの物語 Comment:0
    ロクが小学校へあがる時にはもうすでに、家の裏山のことは誰よりも詳しくなっていた。
    ロクが特に好んで足を運んでいた季節は広葉樹が葉っぱを落とした秋から春にかけての時だった。
    その季節は、あたりが暗くなっても家に帰ってこない日がたくさんあった。
    そんな時カイはロクを探しに行き、見つけるとしばらくそこで一緒に過ごした。
    複雑に交差した木々の枝の隙間から見える星を眺めながら、2人はハルのことをよく話した。
    ロクはハルが頻繁にブナの森へ行っていたこと知っていた。
    「かあさんが特に好んでいたのは、今日のように月がほのかに森を照らしそれでいて空にはたくさんの星が見えている時だった。かあさんは葉っぱが月明かりに照らされ幻想的に輝いている季節が好きだったみたいだけど、ぼくは葉っぱを落とした今の季節が好きだった。」
    胎児だったロクが憶えているハルの記憶を聞く事がカイにとっては、この上なくシアワセを感じるひとときになっていた。

    月に照らされた森の中、空を見上げながら父親と息子は、それぞれ尽きることなくハルの事を考えていた。

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    カイの物語

    2011.07.01 カイの物語 Comment:3
    ロクが生まれてしばらくして、ハルが亡くなった。
    それは大きな赤い月の輝く夜だった。
    産後の肥立ちが悪かったといえば確かにそのようだったけれど、まさか死んでしまうとはカイはこれっぽっちも思っていなかった。
    亡くなる3日前、ハルは研究中だったブナの林にカイを連れて行った。
    その時のハルは、落ち葉が深く積もるこの場所を歩くのがとても大変そうだったけれど、目だけはキラキラと力強く輝いていた。
    「ブナが放出する酸素には、どうやら特別なイオンが含まれているらしい事がわかってきたんだよ。
    それがブナ自身やその周りの環境にどういった作用を及ぼしているのかが、私はきっとかなりの影響を及ぼしていると思っているんだけど、あまりよく分からないの。
    でも、あなたも感じるでしょ。この場所に満ちている明るく力強い雰囲気を。」
    確かにカイはその時感じていた。
    カイ自身の細胞がそれを直接感じているという事はあまり多くはなかったかもしれないけれど、ハルを通してそのエネルギーは確かに伝わってきていた。
    そして、ハルは自然と会話をすることの出来る特別な存在だという事に、カイは気付いた。

    その場所から帰ってくるとハルはみるみる衰弱していき、ハルと親交のあった高名な医者ですらどうする事も出来なかった。
    きっと、ブナの生命力がハルを殺したんだとカイは思った。
    ハナは妊娠期間中のかなりの時間このブナの林に足を運んでいた。
    その事がロクに少なからずの影響を及ぼしているかもしれないと、死の間際にあるハルは朦朧とした意識の中で何度も何度も口にしていた。
    確かに、ロクは時々目の輝きの具合が変化する・・・。

    ハルが亡くなってからは、以前にも増して子供たちにはとてもいい父親だった。
    カイは子供たちを通して、そこにハルの存在をしっかりと感じていた。
    でも、子供たちがみんな静かで安らかな寝息を立て、夜空を明るく照らす大きな月の浮かんでいる時は、その月を見ながらいつまでもいつまでもハルを想い泣き続けた。

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    カイの物語    ークウと月の関係ー

    2011.05.13 カイの物語 Comment:0
    この花の咲く頃カイとハルは、3人の子供達、クウ、ハナ、ユキを連れてこの場所に必ず来ていた。
    カイは、ほのかな浅紫色をつけるこの花の清廉さと高潔さがとても好きだった。
    カイが長い間一人座って小鳥の声に耳を傾けながらこの花を見つめている間、ハルと子供達はあたりを散策しては楽しそうな笑い声を上げていた。
    空には昼間の薄い色をした丸い月が浮かんでいる。
    時々、クウは不安気にその月を見上げる。
    まるで、今にも頭の上にその月が落ちてくるんじゃないかと思っているかのように。
    クウが最初に月に興味を持ったのは、まだとっても小さかった時、かあさんに話してもらった「月のウサギ」という話を聞いてからだった。
    その話を聞いた夜クウは一晩中、空に浮かぶ月を見ていた。
    カイも空を眺めるのが好きだったから、よく父と息子はハルに無理を言って買ってもらった天体望遠鏡を持ち出しては夜中じゅう月と星を眺めたりしていた。

    2人の娘とハルがカイの目の前を楽しそうに走り抜けていった。
    それが合図だったかのようにカイは1分ほど空を見上げてからクウといっしょに、娘達を追いかけるため走り出す。
    頭上の月を揺らす一陣の風とともに。

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    年の瀬

    2010.12.22 カイの物語 Comment:0
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    「お前さん、今年はいい年だったのかい?」
    さる江がそう訊ねると、さる蔵は目を細め昇りはじめた太陽を見ながら考えた。
    「そうさなぁ、今年もいい年だったさ。こうしてお前と一緒にいれればそれだけでオラは幸せさー、いつもありがとよ。」
    あらためてそう言われると、さる江は気恥ずかしくなると同時に心がポカポカと温かくなり、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がっていくのを感じた。
    「あらいやだよ、お前さん。お前さんからそんなことを言われると、なんだかとっても恥ずかしくなりますよ。」
    そう言ってさる蔵の方を見ると、さる蔵も真っ赤な顔をして恥ずかしそうにすこしうつむいていた。
    2.3分ほどそうしていたさる蔵はおもむろに手の平を広げて、中に持っていた近くの畑から命からがら盗って来た百合根を差し出した。
    「お前の好物の百合根だで、さあ食え。」
    「これはお前さんも好物じゃなかかいね。」
    さる江は百合根を半分に割ってさる蔵に返した。
    優しい冬の光を受け、さる江とさる蔵はお互いを思いやりながら静かに食べはじめた。

    カイの物語 ーユキの場合ー

    2010.04.08 カイの物語 Trackback:0Comment:0

    静止軌道上にある宇宙ステーションのメンテナンスから帰ってきてから1週間しか経っていないというのにユキは今、深海探査船”アビス”に乗船し1,000メートルの深さの海底にいた。
    ユキが24歳になった2034年、次世代のエネルギーとして20年以上も前から注目されていたにもかかわらず、あまりに不安定であるため今まで採取することができなかったメタンハイドレードをかなりの低コストで採掘出来る技術を日本が密かに独自開発していた。しかし、採掘において海中に漏れ出てしまうメタンの量がかなり多く、CO2などとは比べ物にならないほどの地球温暖化の災厄を招く恐れが懸念される事から、エネルギー省による有識者チームが組織されその一員としてユキはこの探査船に乗船していた。
    ユキに科せられた仕事は、漏れ出たメタンが大気中に放出された時の地球大気の循環がどの様に変化するのかをモデル化することである。
    とても重要な仕事ではあるのだけれど、今のユキは厚さ80cmのアクリルの窓から見えるキラキラ光りながら漂う生き物たちに激しく魅了され、仕事の事は頭の片隅にも存在していなかった。
    ”宇宙よりも深く暗い場所だけど、星よりもキレイに輝く生物がこんなにもいっぱいいるのね。”
    眼を丸くして眺めていると、そんなユキの気持ちを察したのか、
    「ほらほらあそこでヨロヨロ泳いでいる生き物、あいつはさぁ体内に発光バクテリアを住まわせてそのバクテリアの力を借りてちゃっかり光ってるんだよ。それって共生発光っていうんだけどね。」などと、聞きもしないのに説明してくれる、”海底生物おたく研究部部長風男性”が現れた。その時、空では雲がモクモク湧き出ていました。

    カイの物語

    2010.02.12 カイの物語 Trackback:0Comment:0

    カイがその女性”ハル”と出逢ったのは、いつも空を眺めに行く場所だった。
    ハルは、”自然界における植物が排出する酸素の及ぼす周辺環境への影響”を研究している大学の研究員で、冬季の植物の休眠時超微量酸素排出量を調べる為にこの地を訪れていた。
    出逢った時にはお互いすでに惹かれあっており、その夜一緒に食事に行った”アンジェリ”という名のとても家族的な温かい雰囲気のお店で、この後の人生を共に過ごすのだという事をそれぞれが確信していた。
    お互い空を眺めるのがとても好きで、いつも二人で空を眺めては色々な事を語り合った。ハルにすれば理論的に考えてしまうような話題でも、カイと話していれば感覚的思考状態へと意識が変革していくのだった。
    一年後、二人に子供が生まれ、”クウ”と名付けた。
    カイは、自分の心の奥底に潜んでいる狂気の存在が、クウの遺伝子の中にもあるかもしれないと密かに心配していたけれど、そんな心配を微塵も感じさせる事なくクウは明るくのびのびと育っていった。クウが二歳になったある下弦の月のとき、二人は双子を授かった。

    カイの物語

    2009.10.20 カイの物語 Trackback:0Comment:0

    秋の空を見上げると、カイはいつもちょっとだけ不安で心がふらふら不安定な状態になってしまう。きっと秋の空気があまりに澄んでいて、心の中を見透かされて裸になった様な気がするからだろう。それでいてジーッと見ずにはいられない魅力をも感じている。
    今日カイは、高い樹の梢に引っ掛かって取ろうと思っても取れず気になってしょうがない凧の存在の如く、心の中にずーっと居座っている不安定きわまりない感情が存在している事に気が付いた。というかその気持ちと初めて真正面から対峙する事ができたのである。いままで向かい合うことを避けてきた様々な感情がごちゃごちゃと漂っている心の領域にそれは存在していたのだけれども、その感情と向かい合ってからは、そこに漂っていた他の気の滅入るような感情は、ピースの穴を埋めるように、机の引き出しに文房具を整頓するように次々と秩序をもった安心できる形態へと変化していった。
    カイは気持ちが楽になった事に気が付き、頭の中を不透明にして思考を妨げていたモヤモヤした霞がさぁ~っと晴れたような感覚を憶え、ずいぶんと心が軽くなった。
    「長いこと空を眺めるのは、やっぱりいいものだよなぁ。」そんな時、カイの目の前に太陽の如く存在感をもった一人の女性が現れた・・・。

    青木湖の氷 ーユキの物語ー

    2009.02.01 カイの物語 Trackback:0Comment:0

    ユキは宇宙から戻ってくると必ずこの場所に来る。
    日本とヨーロッパの宇宙共同開発事業として建設された宇宙ステーション”sola"が稼働し始めてから5年が経ち、ユキは4年前から閉鎖的空間における空気循環系設備のメンテナンス技術者として年に数十回宇宙で仕事をしていた。
    初めて行った宇宙からの帰還の際、偶然生まれ育った土地の上空を通過し、その時、目にしたこの湖の青さがとても印象的で、それ以来帰還後は欠かさずにこの場所を訪れていた。
    ユキは氷の張るこの季節が特に好きで、何時間でも時間の過ぎるのも気にせずに過ごすことが多かった。
    2036年の日本において、雪の降る場所は北海道とここだけになっていて、雪のあるここの景色の希少性がより一層ユキの心に響くのである。
    「あぁ、わたしはここの場所にとっても強く惹かれるわ。懐かしさは当然感じるけど、それ以外にも何とも言えず心がザワザワと落ち着かなくなってしまう。」
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